農山漁村滞在型余暇活動に資するための機能の整備に関する基本方針
東京都における
グリーン・ツーリズムの推進
第1 目的と背景
近年、都市住民を中心に余暇を利用して農山漁村での生活や余暇を楽しむ人が増加しています。このような農山漁村での余暇活動を、グリーン・ツーリズムと呼んでいます。

グリーン・ツーリズムとは
東京都ではグリーン・ツーリズムを、誰もが参加することができる、日帰り型から滞在型までを含む「農山漁村でのさまざまな体験を楽しむゆとりある余暇活動」と位置付けます。

基本方針の策定
山村や島しょ地域を活性化することを目的に、農山漁村を「住む人」にとっても「訪れる人」にとっても魅力ある空間として維持整備するために、農林水産業の面からこの基本方針を定めます。

第2東京都の農林水産業の現状
@ 農業
(1) 地域ごとの特色を生かした農業の展開
東京は、1180万人が暮らす世界でも有数の大都市ですが、都市、山村、島しょ
の各地域で特色を生かした農業が営まれ、新鮮かつ安全な農産物を都民に供給しています。
また、農地は温暖化の緩和など都市環境の保全、緑地空間や防災空間の確保、憩いの場や学習体験の場の提供など様々な面で都民生活に役立っています。

都市地域
区部と多摩地区の市街化区域を中心とした都市地域には、東京の農地の85%があり、野菜や花き類、果樹等が生産され都民に供給されています。
また、直売施設や市民農園などは、都民と農業のふれあいの場になっています。
※ ここでは都市計画法に定められた市街化区域及び市街化調整区域をいいます。

山村地域
奥多摩町や檜原村などの山村地域では、ワサビやキノコ類、めん羊等が地域特産品として生産・加工されています。また、観光と連携した直売施設や体験農園などの整備が図られています。
※ ここでは農林統計の「山間農業地域」及び特定農山村法で指定されているあきる野市の一部地域をいいます。

島しょ地域
伊豆諸島や小笠原諸島では、温暖な海洋性気候や温泉等の自然エネルギーを生かし、切り花や切り葉、観葉植物、また特産野菜のアシタバ、キヌサヤエンドウ、さらにパッションフルーツ等の特産果樹も生産されています。
民宿等の宿泊施設は確保されていますが、その利用客の余暇活動と農業の結びつきはそれほど強くありません。

(2) 農業施策の現状
東京都では、「都民の豊かな食生活と農のある快適なまちづくり」をじつげんするために、平成5年度に「東京農業振興プラン」を策定しました。
「都民とともにつくり育てる東京農業」を目指し
東京農業振興プラン  「産業としての東京農業の振興」と
「農業・農地による良好な都市環境の保全」のための施策展開
農業振興プランでは、豊かな自然に恵まれながら、生産環境の面で不利な条件の多い山村や島しょ地域において、観光と結びついた農業の展開などによる農家所得の増大を図ることを提言しています。
このプランを基に、大島町、三宅村、八丈町などの島しょ地域ではふれあい牧場や体験農園の整備、特産物を利用した各種イベントの開催などを、また、奥多摩町、檜原町などの山村地域では、地域資源を生かした観光農園等の整備による地域の活性化を支援しています。

A 林業
(1) 多くの公益的な機能を持つ東京の森林
東京の林業は、従事者の高齢化や木材価格の低迷などにより、厳しい局面を迎えています。しかし、森林は水資源のかん養や災害防止、大気の浄化や景観の提供など多くの公共的な機能を有しており、これからも都民が守らなければならない大切な財産です。
(2) 林業・森林施策の現状
東京都では、「都市と森林の共生による森林のあるまちづくり」を実現するために、平成7年度に「東京の森林づくりプラン21」を策定しました。
このプランを基に、国、市町村、林業団体との連携強化と都市住民の理解と協力による都市と森林の共生を目指しています。
また、尾根筋や沿道沿い、河川沿いの整備には「色彩豊かな森」を、さらに、里山の森、会員制の森、区、市民の森、学校林などを「ふれあいの森」として提案し、都市住民への開放と協力体制の確保を推進しています。
「都市と森林の共生による森林のあるまちづくり」を目標に
東京の森林づくりプラン21の提案「産業としての東京の林業の振興」と
「森林の保全と創出による都市環境の改善」に向けて施策展開
B 水産業
(1) マリンレジャーとの調和を進める東京の水産業
東京の島しょ地域を中心とする水産業は、日本200海里水域の45%を占め、国内で一番広い漁場を有しています。
しかいs、海況の変化などから漁獲量が減少している上に、漁港の規模が小さく整備等が遅れていることから、島しょ地域の漁業経営は厳しい環境におかれています。
また、東京都の臨海部(内湾)や多摩川などの河川(内水面)では、これまでも遊漁船や釣り堀り、魚類の放流などによる経営が展開されており、今後は都民に最も身近な親水域として自然との調和を重視した釣り場施設等の整備に大きな期待が寄せられています。
(2) 水産業施策の現状
東京都では、「水産業の活性化と豊かな海や川づくり」を目指して、平成8年度に「東京の水産業振興プラン」を策定しました。
このプランを基に、漁家経営安定化の一貫として、地場流通や直売の推進とともに観光関連事業への取り組みを推進しています。
「水産業の活性化と豊かな海や川づくり」をい目標に
東京の水産業振興プランの提案「新たな資源管理の推進」と
「担い手の確保と水産業経営の安定」に向けての施策展開

グリーン・ツーリズムの推進のための課題
東京農山漁村が魅力ある空間として都市住民に受け入れられるためには、次の条件を備える必要があります。そして、この条件を満たすためには、以下の課題を解決することが求められます。

グリーン・ツーリズム導入の条件
・ 農林水産業が基幹的な産業として位置づけられており、その地域の特色を備えていること。
・ 農林水産業者がもてなしの心をもって都市住民を受け入れ、気軽に交流が出来ること。
・ 農林水産業の体験や宿泊のための施設が、地域の特性を生かしたものであり、快適かつ適切な価格で利用できること
・ 田、畑、森林、海、河川などが農林水産業者によって適切に管理され、それらが自然環境とも調和して良好な景観を保つこと

@ 農林水産業の発展
担い手の育成と健全な農林水産業の発展
グリーン・ツーリズムの展開には、そこにいきいきとした生産活動が行われていることが何よりも大切です。
しかい、生産物の価格低迷、担い手や後継者の減少、さらに都市開発の影響などにより、東京の農林水産業は非常に重要な局面を迎えています。
今後、農林水産業の基盤を守るためには、生産、加工、流通、サービスなどを有機的に結びつけた経営の振興と、それを迎える人材の育成が必要です。

A 都市住民との交流体制の整備
交流事業への組織的な対応
グリーン・ツーリズムの導入による都市市民との交流は、停滞気味の農林水産業に新たな視点とビジネスチャンスを生み出すことができます。さらに都市市民が生産現場に触れることは、農林水産業の理解を深める絶好の機会であり、新規参入の動機付けにもつながります。
しかし、都市市民が無秩序に生産現場に入ることは、必ずしも好ましいことばかりではありません。作業が中断されることにより、生産性が低下することもあります。
交流事業の円滑な推進については、担い手の指向や地域の状況を配慮したシステムの構築と受け入れ組織の育成が重要となります。
また、農山漁村には多くの名所や旧跡などがあります。多様化する都市市民のニーズに応えるためには、地域の観光産業との連携による分担や協力を図り、これまでの観光とグリーン・ツーリズムの円滑な相互乗り入れを進める必要があります。

B 体験や宿泊のための施設の整備
安全・清潔・適切な価格で利用できる体験・宿泊施設の整備
現在、農産物のもぎ採りや摘み採り、釣り堀など、個人経営的な体験施設の整備が進みつつあります。しかし、これらの施設は、利用者のニーズにあったものばかりではありません。
また、宿泊施設についても、これまでのものは一般の観光客を対象にしており、繰り返し訪れ、地域での体験や滞在を求める人達を対象としたものとなっていません。
グリーン・ツーリズムを推進するためには、一般の観光客のほか、繰り返し訪れ滞在を望む人達が満足できるような体験・宿泊施設の整備が必要です。このためには、利用者のニーズに応えられるよう快適でかつ適正な価格で利用できることを基本に、地域の特性を生かした施設のあり方を見直していかなければなりません。

C 地域に住む人々の合意
河川、海岸線などの自然や手入れの行き届いた森林・農地、また、社寺や家並、生け垣などの集落の個性は、都市住民を惹きつける重要な要素です。
しかいs、山村や島しょ地域にも開発の波が押し寄せ、地域の特徴を生かした計画的な土地の利用が難しい状況にあります。
景観の維持や形成を測るとともに、利用者のニーズや地域性に沿った開発を進めるためには、地域住民の合意に基づく協力が不可欠となっています。

第4グリーン・ツーリズムの推進方策
東京とは健全なグリーン・ツーリズムを推進するために、次の4つの方策を柱にして、市町村と協力し積極的に関連施策の導入を図ります。

推進方策
1、 農林水産業の振興
2、 都市住民との交流体制の整備
3、 体験や宿泊のための施設の整備
4、 地域に住む人々の合意形成の支援
@ 林水産業の振興
農林水産業の担い手の確保と育成
農林水産業の担い手になる人は、現在、農林水産業を営んでいる人、後継者、これから参入する人、さらにボランティアグループなどに区分できます。
これらの人々が、夢と希望をもって農林水産業の経営や支援ができるよう技術や経営の指導を行うとともに、検収・融資・農地の情報の提供、相談窓口の開設などの事業を展開して行きます。
生産基盤の整備
田、畑、森林、海、河川などの生産基盤、そして、栽培、集出荷、加工などの農林水産施設は、担い手とともに農林水産業の基本です。
これらを地域の特性に合わせながら、より効率的な生産活動が行えるように整備を進めています。
都民ニーズに即した生産と流通の整備
大消費地の中で、消費者のニーズが直接把握できるという東京の利点を活かして、安産に生産したものをできるだけ短時間に食卓に届けられるような生産と流通のシステムを整備して行きます。
観光を取り入れた農林水産業の振興
消費者にとって、収穫や加工など自らの体験をともなった農林水産業物は、単に購入したものに比べて、新たな価値が加味されることとなります。
また、農林水産業者にとっても、消費者に作業体験を提供することは、生産物の付加価値化や労力の軽減が図れる上、経営の複合化や安定化をもたらします。
そのため、都市市民が農林水産業の収穫や加工などの体験を楽しむことのできる、観光を取り入れた農林水産業の展開方法の提案、運営指導などに積極的な支援を行います。

A 都市市民との交流体制の整備
都市市民に対するPR活動の推進
都市市民に農林水産業への関心を高めて、「一度は体験してみたい」という考えを持ってもらうことが、なによりも大切です。また、農山漁村では、これらの都市住民の要望に応えられる環境が整備されていることを知らせることも必要です。
東京都は、農林水産業の魅力を各種イベントの開催や情報誌の発行、情報窓口やアンテナショップなどの設置の支援を行います。
受け入れ体制の整備
グリーン・ツーリズムは、都市市民と農林水産業との交流から始まります。地域の人々が協力し合って、都市住民を受け入れるシステムを作り上げなければなりません。

○ 地域レベルでの体制整備
都市住民の受け入れ体制、農山漁村での宿泊や観光、地場食材の提供など、各分野が協力して、地域でのグリーン・ツーリズムの推進ができるよう都市住民を受け入れ、楽しませる多様なメニューの開発と実践が大切です。
そのため、各種交流活動の発案や工夫を活発にするため、マニュアルの作成や地域の推進役となる人材の育成などについて支援を行います。
○ 個人レベルでの体制整備
都市住民に直接対応する農林水産業の人々に対して、交流マニュアル等による説明を行うとともに、安全で楽しい農林水産業体験を指導するための研修、地場食材を活用した調理講習会などの開催を支援します。

B 体験や宿泊のための施設の整備及びその活用方策
快適な生活空間等の整備及び活用方策
農山漁村に住む人々にとって快適な生活空間を、また、そこを訪れる人々にとっても心の和む空間を創造するため、道路や水路、そして生産基盤等の整備を自然環境との調和を図りながら進めます。
さらに、関連する公園や広場、そして集落排水施設などの公共施設等の整備も行っていきます。

農林水産業の体験施設の整備及び活用方策
幼児や高齢者、ハンディキャップを持つ人などを含む誰もが、安心して楽しく自然や農林水産業とのふれあい体験ができる施設、そして、地域の特産品を味わったり、心身をリフレッシュできる施設の整備を行ないます。

宿泊施設の整備及び活用法策
快適で勝つ適正な価格で利用できる農林水産業体験民宿に着いて、融資などにより支援を行ないます。

C 地域に住む人々の合意形成の支援
合意形成の支援
地域が一体となって、グリーン・ツーリズムを推進するためには、協定や取り決めなどに基づく、地域の合意の形成が不可欠です。
生産基盤を確保するための協定、生産物を地域で利用するための協定、地域内の役割分担やサービス向上のための協定、都市住民が気軽に各種体験できるための取り決めなど、各種協定の整備などについてアドバイスや支援をしていきます。
支援体制等の整備
関係行政機関及び農林漁業団体、観光団体等から構成する支援組織を設置し、グリーン・ツーリズム推進マニュアルを作成します。また、市町村計画の作成への指導・助言、市町村間の連携、農林水産業者へのアドバイスを行なうなど、東京都におけるグリーン・ツーリズムの推進に努めます。
地域ごとのイメージ
島しょ地域における支援の方向
○ 整備に遅れる体験・滞在型の施設や各種のふれあい施設を整備し、観光と連携した農林水産業を推進します。
○ 担い手の育成や生産基盤の整備を支援して、農林水産業の振興と都市住民への豊かな地域特産物の提供を促進します。

● 海岸、海面の多様な利用とルールづくりの推進
● アワビ、トコブシ、サザエ等の栽培漁業の推進による水産資源の涵養
と漁獲の安定
● ガーベラ、フェニックス、レザーファン等の切り花・葉の生産振興
● キヌサヤエンドウ、アシタバ等の特産野菜の生産振興
● 地域特産物の生産並びに加工の振興と直売施設の整備
● 豊かな自然を生かしたスポーツ(マラソン・ウォーキング・ラリー)
イベント等の振興
● ふれあい型の農園や牧場の整備と体験型の民宿の振興

山村地域における支援の方向
○ 国土保全や水源かん養のために、重要な役割をもつ山村地域については、自然との調和や地域の環境や景観を配慮した、施設の整備と体制づくりを応援します。
○ 都市住民の多様なニーズに応えるための、体験施設整備や生産振興を積極的に進めます。
● 水源を守る森林づくりの推進とふれあいの森の整備
● 森林ボランティア団体や森林・林業体験等を行う団体の受け入れ体制の支援
● 特産の東京シャモやめん羊など地形や労働力に見合った畜産の振興
● ワサビ、きのこ類、ユズなどの特産品生産の振興
● 直売施設の整備
● 体験型宿泊施設の整備
● いも類やウメ、クリ、ブルーベリーなど果実類の摘み取り方式の推進
● 魚の放流、魚道の整備、水辺のクリーンアップ事業による豊かな水辺環境の創造
● 農林水産物の付加価値を高めるための加工施設の整備

BACK